知り合いからおすそわけしてもらう、手作りのスイーツが子供の頃から大好きだった。

私が子供の頃は、近所のあちこちで主婦が集まり、新しいお菓子を作っていた記憶がある。学校が終わって自宅に帰ると、台所のテーブルや冷蔵庫に「新作スイーツ」が置いてあった。
 以前、大人気の堂島ロールを食べた時、すんなりと入ってきた甘さに、私はもう随分忘れていた子供の頃の舌の記憶を思い出した。
 近所には昔、何人か、職人並みにお菓子作りの上手なおばさんがいて、時折届けられる「おすそわけ」が嬉しかった。
 その中でも二つ、大好物があった。一つは、チョコレート味の生地と普通の生地を重ねて巻き、端から金太郎飴のように切って焼いたクッキーだ。少し苦みのあるチョコ味の部分と、甘い生地のバランスが絶妙だった。一つ一つがわりと大きめで、しっとりとしたバターの味は、舌と、鼻で味わっていたと思う。一口食べると、口から少しこぼれてしまい、それでも先を急いでまた食べたくなる。重くなく、パサパサしていなくて、いくらでも食べられてしまうけれど、なくなってしまわないように、大事に食べた。
 もう一つは、和風デザート、おはぎだ。以前、和菓子を作るのがとても上手なおばあちゃんがお隣にいて、桜餅、草餅、おはぎを季節ごとに届けてくれた。おはぎはあんこがつぶあんで、もち米は、若干、つぶが残っていてねばりがある。和菓子と聞くと、甘過ぎて胃がもたれる印象もあるかも知れないが、全くそうした心配が杞憂に終わる、上質な味だと私は思っている。
 今思うと、この二つは、どちらも商品化を視野に入れない、長年台所に立った女性が独自の経験と舌で、家族のために作り出した味であり、その率直さと、保存料や香料の入っていない良質さが、値段のつかない、ごく一部の人の記憶に残るスイーツを作り出したのかもしれない。
 スイーツは私にとって贅沢品であり、幸せな時間をもたらしてくれる。その中でこの先、また記憶に残る味に出逢えたら、嬉しいと思う。

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